賞与・退職金に関する「不合理性」を否定した最高裁判決
2020年の10月には、格差に関して注目の判決がいくつも出ました。その概要をまとめたのが表です。
この5つの事件を通じ、最高裁判所において基本給、賞与、退職金、住宅手当や精勤手当などの各種手当、傷病休暇や夏季休暇の扱いなど、有期雇用労働者と通常労働者との格差について幅広く、争われました。
いずれも個別の事情が深く関わるということを前提に、有期労働者と通常労働者間の待遇格差の「不合理性」に関する裁判所の判断とその根拠が示されるとともに「同一労働同一賃金」に関して一定の判例法理を形成するものとして、注目を集めました。
なかでも広くニュースをにぎわせたのが、大阪医科大学事件における賞与不支給とメトロコマース事件における退職金不支給に関し、最高裁が高裁の「不合理」判決を覆したことです。
この間、「働き方改革法」検討が進むとともに、非正規-正規の格差に対する不合理性について認められる方向にあったこともあり、驚きをもって受け止めた方も多いかもしれません。
約法20条「不合理な労働条件の禁止」
5つの事件の判決判断根拠 となっているのは旧・労働契約法20条「不合理な労働条件の禁止」による判断です。旧・労働契約法20条は、改正パートタイム労働法の8条へと引き継がれますが(労働契約法と改正パートタイム労働法の関係性については、下記記事を参照)、その内容に若干の差異があるため、この判決は「鵜呑み」にはできません。
ただし、改正パートタイム労働法が、中小企業にも適用される2020年4月以降も、この5つの事件と2018年の重要判例の判断根拠は、今後の通常労働者とパート/有期雇用労働者との格差における「不合理性」判断にも大きな影響を与えると思われます。5つの判例については別記事にて個別に解説をしていきます。