昭和時代の「正社員」イメージは過去のもの?

基礎知識

比較対象の「正社員」はどんな労働者?

「同一労働同一賃金」の比較対象は「正社員」です。しかしこの「正社員」は法律用語ではなく、企業によって定義はまちまちです(法律上、一般社員ことは「通常の労働者」と言います)。

それでも「正社員」というと右図のイメージを抱く方が多いものです。つまり①雇用期間は「無期限」で雇用形態は「直接」②フルタイム③月給制④賞与や退職金がある⑤福利厚生や社会保険があるといった要件をすべて満たした人が正社員だということです。

しかし最近、この「正社員とはこの5つの要件をすべて満たしていること」という概念は大きく変わってきています。その概念の大きく変えたものの1つが「(勤務地や勤務時間を限定した)限定正社員」という概念の登場です。限定正社員の代表格である「短時間正社員」は、週休3日や時短勤務し、(それに伴い)時給制によって働いたりすることもしばしばです。

昭和の正社員のイメージ

賞与や退職金、社会保障もある非正規社員?

もう1つが(本書のテーマである)「同一労働同一賃金」です。同一労働同一関連の法律では、(フルタイムではない)パートタイマーや有期雇用の労働者へも、賞与、正社員との均等待遇(3-7参照)均衡待遇(3-8参照)を求めています(なお、2018年から手当や賞与・退職金を支払わないことに関しての判例は4章でまとめて解説します)。

さらに、パートタイマーへの厚生年金適用の拡大(週30時間以上から、週20時間以上、年収106万円で加入など)が2016年に行われました。そのうえ501人以上に限定されていた企業規模も、2022年は100人以上、2024年には51人以上まで拡大することが2020年6月に決まりました。 つまり、社会保険加入の有無で正社員かどうかを区別することも難しい状況となっています。いわば明確な「非正規(派遣社員やごく短期間勤務を想定したアルバイト)」以外の人が「正社員」とも言える状況というなかで、「雇用形態や労働時間が違うから、給与が違うのが当たり前」という時代は終わりを迎えようとしているのです。